製薬企業所属の医師だからこそできる患者さんへの貢献のありかた―製薬企業の社員(non-MD)からの視点②-2

その二:日本における医薬品開発は欧米型へとシフト

一方で日本での医薬品開発の進め方にも変化が見られました。1998年にICH E5ガイドライン(外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因についての指針)が発出されると、日本人のデータと海外のデータを比較し、医薬品の作用に与える民族的要因の影響を科学的に評価するようになりました。それまで、日本では多くの臨床試験で「最終全般改善度」という複合的な評価指標が用いられてきましたが、欧米型の個別の評価指標をより重視する試験デザインに変更する必要が出てきたのです。さらに2000年代中ごろから国際共同試験に日本からも参加するようになり、試験デザインはますます欧米型になっていきます。

このような時代背景の下、1990年代前半までは、製薬企業の開発部門に医師が勤務していることはまれで、私の経験では、勤務していたとしても多くはメディカルアドバイザーとして、臨床開発の安全性面のアドバイスや各種文書のメディカルチェックなどが主な業務でした。しかし、行政側の審査体制の充実、臨床試験の国際化を背景に、2000年ごろから、製薬企業内にも規制当局や海外企業と医学的な議論のできる知識を持ち、プロジェクトをリードできる医師の存在が必要となったのです。