MAの歩き方(その6)

「組織構造」~組織は戦略に従う~

前回では「戦略」について解説しましたが、
今回は「組織構造」についての解説です。

「組織は戦略に従う」という格言みたいなものがありまして、
提唱したのはチャンドラーと言う経営学者です。
チャンドラー先生は当時(1960年代)のアメリカを代表する企業を分析して、
それらの企業が今日ではごくありふれた「事業部制」という組織構造を採用した理由が、多角化・国際化という経営戦略を効果的・効率的に成功させる為に組織構造が変化していったためである事を明らかにしました。

この事業部制は製薬企業でもよくあって、
特にオンコロジー領域では事業部制を採用している会社が多いようです。

代表的な組織の構造としては、「事業部制」以外にも、
「機能別」
「チーム型」

というのがあります。

「機能別」はよくある、
「営業」・「マーケティング」・「研究開発」・「製造」などなど・・の組織構造です。
これは理解しやすいです。
特定の業務に特化しているので、その分野では仕事がしやすいですが、組織が大きくなってくると縦方向のレイヤーが深くなり、意思決定に時間がかかる事が良くあるチャレンジです。

「チーム型」はプロジェクトチームをイメージしてもらえると分かりやすいでしょう。
新製品の開発は臨床開発・薬事・メディカル・マーケティングなどでプロジェクトチームを作ることは良くあります。
この形態が上手く行くには、チームメンバーの専門的な能力が高い事は当然ですが、
自分の部下でも何でもない人を巻き込んでいくリーダーシップが特に必要とされます。
一見相反する専門性と汎用性のあるリーダーシップを如何に両立させるのかが悩ましいです
多くの場合は各チームメンバーが特定の組織に属しているので、いわゆる「マトリックスチーム」になります。

「事業部制」は一つのビジネス単位でまとまって
複数機能(開発もメディカルもコマーシャルも事業部門長の下)を有しており、
ミニ会社みたいなもので、迅速な判断が自律的にできる事がベネフィットです
欠点は複数の事業部門がそれぞれの機能を保有すると、リソースの重複が起きる事です。
事業部が5つあってそれぞれ人事部とかいるとこれはリソースの無駄遣いになります。

皆さんが所属している組織も大体上記のどれかの構造になりますが、
戦略が変化していった場合に既存の組織構造では対応しきれなくなって、結果的に組織改編が起きる事は良くあります。
したがって会社の戦略が大きく変わる時は数年に渡って組織構造が変化し続ける事となり、
それに疲れて転職する人が増えてきます。

チャンドラーが提唱した「戦略は組織に従う」という格言は、もはや言葉遊びの様ですが、
「新しい戦略を導入しようとしても、既存の組織が変革を嫌うので、そんなに上手くは行かないよ」
という意味合いで使われます。
既存の組織の抵抗に配慮しつつ戦略修正をせざるを得ない場合もあるのですが、
長期的には冴えない戦略によるビジネスの不振によって、最後は組織の形が変わってしまう事はよくあります。
その間の迷走は関係者にかなりのダメージを与えるので、戦略を変えた時に組織の形も素早く変えてしまうのが良いとされています。
関係者に配慮して少しづつ組織を変えると、継続的に不安定な状態が続くので、残ってほしい人が先に辞めてしまうリスクがあるのです。
次回はシステム(System)について解説します。

(続く)