日本は国別でいうとアメリカに次ぐ世界第2の医薬品市場です。そのため、多くのグローバル製薬企業が日本にできるだけ早く新薬を上市しようとさまざまな努力をしています。また、日本企業も徐々に人口減少する日本市場だけでは生き残るのが難しく、精力的に海外に進出しています。そのなかでもアメリカは外すことのできない巨大市場です。世界中のほぼすべての製薬企業はその巨大市場でいち早く新製品を上市するためにしのぎを削っています。アメリカ以外の国に本社がある会社でも、アメリカに開発の本部を置いている会社は少なくありません。

グローバル企業が行う医薬品の治験はグローバル試験です。日本もグローバル試験に組み込まれます。その時に日本人医師が開発プロジェクトに入っていると、早期の段階から日本の環境にあった治験のデザインについてインプットすることができます。グローバル試験が日本にやってきたとき、日本の事情にそぐわない組み入れ基準や使用禁止薬剤 が多々あります。こういったことはプロトコルのレビューが日本にやってきたときに、日本用の基準をグローバルチームに要求するのはやはり医師からの視点で申し入れた方がスムーズに行きます。あまりに大きく違うと別試験を組まなければいけませんが、ある特定の要件 は日本人だけはこの基準でといってクリアできる場合もあります。日本で治験を行うのはほんとうにコストがかかるのです。グローバル企業ではコスト削減を達成するため、できるだけ日本のみで行わなければならない試験数を減らそうとしています。ですから、早い段階から適切に日本の環境にも合った治験デザインをグローバルチームとすり合わせをおこなって、のちのち日本の当局との交渉がスムーズにいくように配慮することが重要です。これは日本人医師が日本のローカルチームで貢献することでも達成できますが、より直接的には日本人医師がグローバルチームに所属して貢献することも可能です。

あなたの持っている医学的知識を使って、世界的権威の医師、研究者とともに臨床試験のデザインを考え、世界三極の医薬品審査当局、FDA, EMA, PMDAと交渉することはグローバルチームに属することによって達成できます。これらの当局と交渉し、そしてうまくいって申請・承認といったマイルストーンを達成したら、あなた自身の市場価値があがり、多くの製薬会社からお声がかかるでしょう。一つの会社でずっと働くというのも難しい時代です。ダイナミックに環境が変わります。グローバル環境で働き、あなた自身を磨き、あなたのやりたいプロジェクトを会社という枠を超えて選ぶことも製薬業界では可能です。