製薬企業所属の医師だからこそできる患者さんへの貢献のありかた―製薬企業の社員(non-MD)からの視点①-8

その八:企業内医師(MD)として活躍するための心構え

次に、実際に企業で働かれる社内医師ご自身の観点から。企業で勤務するうえではどういうマインドセットを持てばよいのでしょうか。業界の方はよくご存知のとおり、医薬品開発はチームプレーです。それぞれの領域の専門家で作り上げたチームの中で、医学の専門家として、「協業」できる存在、そしてチームを「トップダウン」ではなく、「リード」できる存在が、企業の求める一つの社内医師像なのではないかと思います。医療現場ではご自身の意見がすべての意思決定に直接的かつ密接につながっていると思いますが、企業ではより多くの、何層ものステークホルダーを巻き込んだ複雑な意思決定がなされます。最初は、ご自身の権限範囲が小さくなったと錯覚されるかもしれませんが、チームプレーを通して、他人を効果的にInfluenceし、結果的にご自身のやりたいことを達成するノウハウを身に着けられると、個人ではとてもなしえなかったレベルの、国や世界を動かすような、大きな成果を勝ち得ることも可能になると思います。 もし企業で勤務されればどのような活躍の場があるのか。より具体的なイメージを持っていただくべく、私がこれまで海外勤務も含めた経験の中で見てきた、社内医師、特に日本人医師の活躍事例をご紹介します。今や医薬品開発は日本国内に止まることはまれで、日米欧、最近では中国も含めた四極を中心とする世界規模の展開が中心となってきています。世界的な医薬品開発を行う際、その戦略を策定・実行していく上で、少なくとも欧米で中心的な役割を行うのは、医師です。日本側にも医師を布陣することで、医薬品の世界展開における質とスピードを高めることができます。例えば国際共同治験を軸とした開発を行う場合、日本における開発チームにおける社内医師は、標的となる病気の日本における標準治療や問題点、ニーズ等を海外のメンバーに伝え、臨床試験デザインを適宜日本向けに調整しつつ試験全体の科学的妥当性を担保する重責を担います。併行して国内規制当局との相談でも討議の主軸を担われます。社内でお金や時間の話になった時は横からチームがサポートしつつ、日本チームとしての医学的意見・要望をしっかりと発信してもらい、日本の医療現場ニーズや患者さんに寄り添った試験デザインを一緒に作り上げていく中で、本当に頼もしい同僚であると思いながら一緒にお仕事をしてきました。