【インターンシップ】No.2 ガレット・コーマンさんへのインタビュー
所属はどちらです?
ユタ大学の皮膚科でレジデントをしています。
どうしてインターンシップに興味を持たれましたか?
レジデントの最終段階の選択科目を何にしようかと考え、皮膚の外用薬のデリバリープラットホームおよび開発を学びたいと思いました。僕は特に爪白癬の治療に役立つ新規薬剤に興味がありましたので。
いつどこでインターンをされましたか?
ノースカロライナのダーラムにあるNovan社で2019年の10月21日から11月8日まで3週間インターンをしました。
インターンでどのようなことを学びましたか?詳しく教えてくれませんか?
Novan社の一酸化窒素(NO)を外用薬として用いるテクノロジーを学び、そしてNOが持つ抗菌作用、抗ウイルス作用、血管拡張作用、抗炎症作用の薬剤への応用を学びました。
実際にその薬剤を作っている現場を見せていただき、品質管理が厳しく行われているのを学びました。同一性、濃度のコントロール、純度のコントロール様々なチェックが行われていました。とくにNOはガスなので、それを外用薬にするために安全にも留意して製剤がつくられている過程は大変興味深かったです。
研究(リサーチ)部門でもインターンをされたんですか?
僕はCMC (Chemistry, manufacturing, and controls)に興味があったので、その辺をNovanの化学者の人たち、生物学の人たちと多く議論させてもらえました。NOガスが外用薬からどのようにリリースされてきて、それがどのように効果を示すかというのをin vitroで示す方法をFDAと交渉しているところでしたので、たくさん学ぶことができました。大学の研究室で学んだことと共通点・相違点があり、本当に面白かったです。
それでは開発部門でのインターンについてお話しください。
臨床試験の第1相から第3相について広く学ぶことができました。
例えば?
患者さんへの使用説明書をつくるために、実際に健常人に使用説明書を読んでもらい、それをきちんとしているかどうかをビデオでモニターする試験は面白かったですよ。この薬は特に小さな子供に使われる可能性もあるので、親がどのようにして子供に使うのかとか、使用説明書をきちんと読まなさそうなのは思春期の子供だろう、だから特にその年代の子供を注意して観察するとか。ウィスコンシンでされている試験でしたが、会社とオンラインでつなげて、会議室で見ていました。チューブのふたを開けるのが難しそうだとか、最初にチューブの裏のとがったところで刺すのがよくわかっていなかったりとか、そういうのを観察し、もっと使用説明書をわかりやすく改善するんだそうです。絵を加えたりして。
それは面白そうですね。
あとは日々の会議に出させてもらいました。CRO(Clinical Research Organization)に外注して臨床試験をしているのですが、それをきちんとスポンサーであるNovanが監督しなければいけないんです。監督がきちんとなされているかどうかをFDAに示すために、CROとの会議の記録を保管し、いろいろなツールを使ってCROの活動を独立してモニターするなど、これは結構大変なことだとい思いました。
なるほど。
臨床試験のプロトコールのレビューもしました。これは実際臨床の現場とは違っていて驚きました。FDAがどうしてもこれを主要評価項目にしなければいけないと言っているものなどは、ちょっとどうかなあと思ったりもしたのですが、そうでないと承認されないのだろうし、また、予算の関係でできることとできないこともあるそうで、いろいろ妥協することも必要なのだと感じました。また、FDAの出している各疾患特定の臨床試験ガイダンスを読む機会がありましたが、臨床家の目から見るとなかなか納得できるものではないような気がしました。こういったガイダンスを出すのに、その疾患の専門家はもっとかかわらなければいけないと感じました。
Investigator Brochure (IB:治験薬概要書)のレビューもしましたよ。ここにはNovan社がしたすべての試験について簡潔に説明されていました。
色々な書類があるのですね。
それからアトピー性皮膚炎の治験を行う際のトレーニングビデオもレビューしました。確かに治験に参加する医師に対して、同じ目線で評価してもらうためにトレーニングをすることは大事だと思いました。実際の診療とは違いますし。
医師で皮膚科のトレーニングを受けてたガレットさんの意見が生かされるといいですよね。
ある大学の研究室で新しい培養環境が整い、そこと共同研究ができるかも知れないというので、その電話会議にも出席させてもらいました。薬は安全で効果があれば承認されるそうですが、どうしてその薬がその疾患に効果があるか、どのように効果が発揮されるのかを示すことができれば、さらに医師は納得して処方をしますよね。企業がこのような活動をしているのも面白いと思いました。
企業と大学の研究室の協力はますます大事になりますね。
FDAへの新薬承認申請資料の作成準備もしていてそれにも少しかかわりました。チェックリストがあるのですが、なんと6000もの項目でプロジェクトマネージャーがその進捗をチェックしています。とても複雑なプロセスです。
本当にたくさん学べたのですね。その中でどれが今後一番役に立ちそうですか?
いくつかあるんですが、まず、臨床試験のデザインと試験遂行のマネージメントです。これについてもっと学んで自分のキャリアに生かしていきたいです。NOのテクノロジーとCMCの人たちと討議したことは今回のインターンシップで学びたかったことの一つでしたのでそれもよかったです。
それでは一番印象に残ったのは?
CMCサイドでは複雑かつ厳しい当局からの品質管理の要求ですね。臨床開発サイドでは、記録義務、いろいろなアクティビティーの協調作業、そして臨床試験から上がってくるデータをどれだけ信用できるものにしていくことができるかですね。良いプロトコール、トレーニングというのはデータの信用性を高めるのに大事だと感じました。
最後にこのインターンシップをほかのレジデントにも勧めますか?
もちろんです。誰でも薬の開発、臨床試験、FDAの医薬品開発規制に少しでも興味を持っている人には素晴らしい経験になると思います。こういったことに真剣に向き合っている人たちとの出会いも素晴らしいです。
ではこのプログラムをもっとよくするために一言お願いします。
もっと多くの皮膚科のレジデントに知ってもらえるよう宣伝してください。僕も手伝いますよ。