製薬企業所属の医師だからこそできる患者さんへの貢献のありかた―製薬企業の社員(non-MD)からの視点①-1

その一:企業内医師(MD)との出会い

私はこれまで国内の製薬企業といわゆる外資の製薬企業の両方で、研究開発の仕事に20年以上携わってきました。そのうち通算8年半は米国での駐在も経験しました。その経験を通じ、日本でも医師が企業でもっと活躍できる機会がまだまだ残されている、と感じています。社会人になって医薬品の研究開発に携わり始めた90年代後半の当時、社内に医師は一人もいませんでした。だからと言って医薬品開発に医師の意見が必要ないというわけではなかったですし、医師の意見は外部のKey Opinion Leaders (KOL) から得ていました。当時は、それで十分と考えており、なぜ社内医師を採用、活用しなかったのだろう、と考えることもありませんでした。

その後キャリアを重ね、2000年代に入ってからは社内医師がバリバリと活躍される環境で仕事をするようになったのですが、そこで私自身も初めて社内医師との協業をいうものを経験し、社内医師の価値というものに気づかされました。特に、医学的・科学的な判断や意思決定の妥当性担保とそのスピードについて、社内医師の存在の有無によって大きな差を生むことを経験から実感しています。また、社内医師がいる場合でも、やはり外部KOLの意見を聞くことは必要なのですが、その際にはいわゆる「MD-to-MD talk」が可能となるわけで、医学・科学面からのキーポイントがあっという間に特定され、すごいスピードで戦略の基盤が出来上がる、いわゆる「話が早い」という状態を横で見ることがよくありました。なかなかエキサイティングな経験です。