第1週:まずオリエンテーション
彼女には、日々私が出席している会議にともに出てもらうことにしました。
私は、スポンサー側の臨床開発医師です。
臨床開発におけるスポンサーというのは、薬剤や機器の特許を所有し、治験によって市場に出す戦略を有している側を指します。
戦略だけではなく、資金力も必要です。
資金を使って、contract research organization (CRO)と契約し、治験を施行します。
私の今いる会社は大変小さな会社(従業員40人程度で、臨床開発部門には10人程度しかいません)ですので、本当に中枢のストラテジー機能しか有していません。
ほとんどCROに外注します。
医師も私一人しかいませんので、3週間ですが優秀なインターンに来てもらって助かりました。
ちょうど第2相臨床試験が終了し、その結果がよかったので第3相試験を始めるためにFDAと交渉を控えた大変忙しい時期だったのです。
FDAと交渉するために、
・どのような第3相試験をするのか
・非臨床試験は第3相試験及び承認申請を行うのに十分なデータがそろっているか
・治験薬はいつでも量産化して安定供給できるように準備できているのか
など、事細かな概要を説明する書類を準備し、質問事項を事前に送っておく必要があります。
この会議は第2相試験終了後会議(End of Phase 2 -EOP2- Meeting)と呼ばれます。
その準備をしながら、FDAとの交渉が良好に終了することを想定して、すぐにでも治験を実施できるようにCROやCRO以外のベンダーの選定も並行して行う必要がありました。
さらに、私の会社はまだ市場に出ている製品がない会社なので、資金集めや共同開発者の募集など、Chief Executive Officer (CEO)やChief Operation Officer (COO)は駆け回っている状態でした。
まず、インターン初日には私が製薬企業の一般的な組織の構造を説明しました。
バイオテックと呼ばれる類の私の会社では、セールス、マーケット機能やそれをサポートする学術(Medical Affairs)はありません。
一般の医師にとっては製薬企業のセールスの人には会うことがあっても、それ以外の機能、部署の人とはなかなか会うことがないので、インターンをする前に製薬企業の大まかな構造と機能、臨床開発の組織について説明しておくことは重要だと考えました。
それを理解してもらったうえで、彼女にいろいろな会議に出席してもらうことにしました。
毎週行われるStudy Execution Team (SET) meeting。
こちらは、治験を施行する各機能の情報交換の場です。
私はClinical/Medicalを担当していますが、Clinical Operation, Regulatory, Biometrics (Statistics & Data Management), Clinical Outsourcing, Quality Assurance, Chemistry, Manufacturing and Control (CMC), Supply Chainがそれぞれ前回の会議からの進捗を報告します。
CMC、Supply Chain以外が私の会社では臨床開発部門に属しています。
Clinical Operation、Regulatory、Clinical/Medicalが各2名有している以外、各一名の小さいグループです。
大きな会社では、プロジェクトがたくさんあるという違いはあるものの、開発のコアになるグループのメンバーは同じようなものです。
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