第3週:チームの一員として、エキスパートとして協力会社にプレゼンテーションしたり、トレーニングビデオのスクリプト作成

その1週間後に彼女は、スポンサー側のClinical/MedicalのメンバーとしてCROと私たちの第3相試験開始のためのキックオフミーティングに出席しました。
キックオフミーティングを丸1日かけてオフサイトで行いました。
まず、スポンサーとCROのチームの顔合わせ、全員で30人ほど集まりました。
その場に来れない人たちは5人ほどいたので、ウェブ会議も途中に挟みました。
基本的には、
・スポンサー側がその治験を行う疾患の大まかな説明
第2相試験の結果
FDAから受けたフィードバック
第3相試験のデザインの詳細
などをプレゼンテーションし、試験前・試験中のプロセスのすり合わせ、CROのチーム構成に対する要望などを討議しました。
CRO側から多くの質問が出たので、そのうちいくつかはその疾患領域が専門の彼女に詳しく説明してもらいました。
彼女はレジデント期間中で様々な疾患を最新の医療システムの中で治療をしているので、患者さん診療の流れを把握して意見をしてくれて大変効果的でした。

さて、第3相試験を始めるにあたって、治験に参加してもらう医師に特に気を付けてもらいたいことがいくつかありますので、そのトレーニングビデオとテスト問題を作らなければなりません。
治験の評価項目には実際の臨床現場ではあまりなじみのないものもあります。
今回は皮膚疾患の治験ですので、
・その病変部の数を数えたり
・活動性の病変の定義はどうすればよいか
・炎症性の反応が出ていれば、それはどのように区別して数を数えるのか
など重点的にトレーニングをします。
治験においてはそれに参加する医師や評価者の判断基準が標準化していなければなりません。そのためのトレーニングビデオなのですが、
・どういった点を特にビデオに盛り込むべきか
・わかりやすい説明はどうしたらよいかなど
これもトレーニングビデオを作ってくれるベンダーがいますので、彼らとアイデアを出し合いながらビデオを作っていきます。

彼女にはそのビデオ原稿を読んでもらって、論理的に間違っていないか、誤解を招くような表現になっていないかなど確認してもらい、ベンダーとの会議にも出席してもらいました。試験問題も分かりやすくできているか検討してもらいました。

また、患者さんには治験期間中に症状や生活の質が変化したかどうかを聞くアンケート(patient reported outcome – PRO)を行います。

そのアンケートは患者さんが普段使っている言語でする必要がありますが、その翻訳についてベンダーと協議する会議にも参加してもらいました。
この翻訳も、普通に英語から日本語や、スペイン語に正確に翻訳するだけではなくて、元の言語のコンセプトがきちんとその疾患を持った患者さんの母国語に表れ、正しく理解されて答えてくれているかを何人かの患者さんに実際に答えてもらって確認しなければなりません。
そのための専門翻訳会社があります。
これも日本語やスペイン語などから英語に逆翻訳をしてもらわないと確認ができませんので時間がかかります。
グローバルスタディを行う場合は何10か国語と必要になることもあるのでタイムマネージメントが重要です。
こういったプロセスがあることは一般の医師にはあまり知られていないので、彼女にとっても新鮮だったようです。
このPROですが、最近はハンドヘルドデバイスやパッドを用いて行われることがあり、ePROと言われています。
これもさらに進化し、患者さんが持っているスマートフォンで行うことも可能になっています。
この質問事項は1週間前までさかのぼってその週にあったことについて答えるのか、それとも24時間前までさかのぼってその日一日に関して答えるのかなど、詳細を詰めなければなりません。
申請を行う主要な治験で使い、承認要件となったり添付文書記載事項に入れるなどという意図があるならば、事前にFDAと協議し、合意を取っておく必要があります。
そして各自のスマートフォンで得た結果と全員同じハンドヘルドデバイスを用いた結果で同じ解釈が可能なのかなど、検証されていることが必要になっています。
私たちの会社ではLunch & Learnとして、昼食時間に一緒にWebinarで最新の情報を常に学ぶ機会を増やすようにしています。
ちょうどePROについてのWebinarがあったので彼女も参加しました。

続きを読むには、5ページ目をクリック。