製薬企業所属の医師だからこそできる患者さんへの貢献のありかた―製薬企業の社員(non-MD)からの視点②-5
その五:日本の医薬品開発の発展のために、今後ますます必要となる医師の視点
こうした時代を経て、今では国際共同開発が当たり前になり、日本を含めた開発が海外主導で進むようになりました。しかしながら、これからは海外についていくだけでなく、Unmet Medical Needsを日本からも海外に働きかけ、発信できるようにしていかなければ、日本の開発力は弱くなってしまうのではないでしょうか?そのためには患者の目線、医師の目線でNeedsをとらえていく必要があると思います。
医薬品の開発は、古くは植物や動物や微生物が作り出す物質から始まりました。最初に物(多くは化学物質)ありきだったのです。ところが分子生物学の進歩により、Targetが同定されるようになり、更にBiologicsの技術が発達し、Targetが決まれば、その抗体を作るなど、必要なものが作れる時代になってきました。遺伝子解析の進歩を背景に、患者の遺伝的素因・生理的状態・疾患の状態等を考慮した、患者個々に最適な治療法を選択し、薬剤の治療効果を高め、副作用を軽減することが期待できるようになりました。
最近、自分や家族が病院にお世話になることが増えてきて、その医療の高度化、たとえば高度な医療機器を用いた手術、その技術を支え、患者の苦痛や侵襲を軽減させるための医薬品の貢献を目の当たりにする機会がありました。医薬品単独ではなく、検査技術、手術手技、医療機器や再生医療を用いた治療など総合的な医療が、個々の患者さんにとっての利益を最大化するために検討されています。
このような環境下で、総合的な医療の一翼を担う有用な医薬品を開発していくために、製薬会社における医薬品の開発業務にも医師の知識や経験を生かしていく必要があると強く感じています。