製薬企業所属の医師だからこそできる患者さんへの貢献のありかた―製薬企業の社員(non-MD)からの視点①

ベテランプロジェクトマネージャー石川順也さんにお話を伺いました。石川順也さんの略歴はこちらです。

石川順也さん
PRAヘルスサイエンス株式会社
シニアディレクター・オブ・オペレーション


20年以上に渡り、製薬業界で研究開発およびメディカルアフェアーズの業務に携わる。2019年4月より現職に就任する以前は、イーライリリー社の日本法人および米国本社(インディアナ州)にて、臨床プロジェクトマネジメント、アジアパシフィック臨床プロジェクトマネジメントオフィス部長、COO/プロジェクトマネジメント部長などを歴任。イーライリリー社の前には小野薬品工業にて勤務。創薬研究員、日本国内CRAを経て同社の米国現地法人Ono Pharma USA(ニュージャージー州)に異動、薬剤開発のシニアプロジェクトマネージャーを務める。京都大学薬学部卒、同大学院薬学研究科修士課程修了。

その一:企業内医師(MD)との出会い

私はこれまで国内の製薬企業といわゆる外資の製薬企業の両方で、研究開発の仕事に20年以上携わってきました。そのうち通算8年半は米国での駐在も経験しました。その経験を通じ、日本でも医師が企業でもっと活躍できる機会がまだまだ残されている、と感じています。


その二:企業内医師(MD)の存在意義とは

このように社内医師というのは企業側にメリットをもたらすと思うのですが、一方社内医師ご自身にとって企業で働くことのメリットはあるのでしょうか。私の知り合いのエピソードを紹介します。


その三:日本における企業内医師(MD)の在り方は発展途上

まずは企業側の方から考えてみたいと思います。日本の製薬業界では、医師は顧客であるという思考が長年にわたって強くしみ込んだ結果、社内医師がいらっしゃってもその意見が医師以外の社員の視点と相反するものになった場合、意見をすり合わせることが難しいという心理的バリアがあるかもしれません。


その四:企業内医師の重要性

まずは、社内医師がいない状況での苦労話から始めます。私の経験上、社内医師がいない場合、医師以外の人間がどれだけ文献や本を読んで知識をつけても、医療現場を知らず、かつ「学位」もない人からの意見発信は、海外の同僚に受け入れてもらうまでに多大な時間と労力を要します。


その五:企業内医師(MD)は頼りがいのあるチームメイト

私が二社目に努めた会社ではプロジェクトマネージャー(以下、プロマネ)として多くの日本人の社内医師の方々と仕事をする機会に恵まれました。「先生方」ではなくあえて「方々」と書いたのには訳があります。


その六:企業内医師(MD)との信頼関係が成功の秘訣

さらにもう一歩踏み込むと、多分に私見を含みますが、私がやっていたプロマネと社内医師の関係性は、社内医師の存在価値を最大限に高めるために特に重要であり、例えるならば野球におけるバッテリー、あるいは究極的には夫婦のような、互いに欠かせない一対の濃密な関係だと考えています。


その七:いかに企業内医師(MD)を最大限活用するか

こうした私の経験をお伝えすることで申し上げたかったのは、社内医師という仕事は病院のお仕事とはずいぶん異なるものではあるが、逆に「企業における医師として」でしかできない楽しみや活躍の場というものもあるのでは、ということなのです。チームで一体となって苦楽を共にし、より多くの患者さんを救うというゴールを達成する喜びがあり、活き活きとご活躍されている医師が既に多くおられます。


その八:企業内医師(MD)として活躍するための心構え

次に、実際に企業で働かれる社内医師ご自身の観点から。企業で勤務するうえではどういうマインドセットを持てばよいのでしょうか。業界の方はよくご存知のとおり、医薬品開発はチームプレーです。それぞれの領域の専門家で作り上げたチームの中で、医学の専門家として、「協業」できる存在、そしてチームを「トップダウン」ではなく、「リード」できる存在が、企業の求める一つの社内医師像なのではないかと思います。


その九:世界へ広がる企業内医師(MD)の活躍の場

ここ二~三十年来、日本を含めた世界規模の医薬品開発は国内企業のみならずグローバル企業でも大きなニーズであり、そうしたグローバル企業での日本人社内医師の活躍は日本国内にとどまっていません。出張ベースで様々な海外の国に出向いて開発戦略の策定を行ったり、時には海外の薬事当局との面談で討議を主導したりするケースもあります。