MAの歩き方(その4)

皆さんも経験したと推測しますが、臨床やアカデミアを離れて企業に就職した時に、よく意味の分からない「組織っぽい」言葉に初めて遭遇して、「ああ自分は何も知らないんだな」と何ともやるせない気持ちになったものです。分からない事を周囲にその都度聞くと、普通に教えてくれたりするんですが、残念ながら「パッケージ化」された「全体像が分かるような」説明をしてくれた人は居ませんでした。入社後の研修やOJTの過程で自分が所属している部署の役割と構造を徐々に体得していく感覚がありましたが、「どうしてこのような構造になっているのか」「組織構造の背後にある意思決定のメカニズムは」などはいつまでたっても良くわからないという感覚がありました。

そのうちマネージャーとかになって、小さいチームでも方向性を定めたり、少しは組織の形などを考える必要が出てくると、何をよりどころにして意思決定をすべきかで悩ましく思ったりもしました。そんなある日に、コンサル会社に勤務する友人から「組織の7S」という枠組みを教えてもらいました。

「組織の7S」は経営コンサルティング会社のマッキンゼーが1970年代後半に開発した、「組織を整える」枠組みです。もしかしたら皆さんも読んだことのあるかもしれませんが、「エクセレント・カンパニー」という名著があり、元マッキンゼーの著者2人が「優れた企業の本質とは何か」について掘り下げたものです。そこに取り上げられたのは1970年代のエクセレント・カンパニーであって、その多くがその後衰退したので、この本には歴史的な価値しかない、つまり時代遅れも甚だしいという書評もあるようです。しかし、それまでの会社のマネジメントが「組織構造・戦略・業務プロセス」に力点を置いていたのを、それ以外の相互依存的な要素をひっくるめて包括的にエクセレンスを分析したところにこの本の価値があると思っています。残念ながら日本語訳の質があまりよくないのですが、一読する事をお勧めします。この本の中で「組織の7S」の原型が以下の様に紹介されています。

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その七項目とは、機構(structure)、戦略(strategy)、ひと(people)、経営の型(management style)、体系と手順(systems and procedures)、指針となる理念(guiding principles)、および企業文化ともいうべき共通の価値観(Shared values)、最後に現有する(または望ましい)企業の強さ、あるいは技術(Present and hoped for corporate strengths or skills)の七つである。
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その後もう少し言葉の整理が進み、現在では以下の「ハードのS」「ソフトのS」のように説明されています。

ハードのS
組織構造(Structure)
システム(System)
戦略(Strategy)

ソフトのS

スキル(Skill)
スタッフ/人材(Staff)
スタイル(Style)
共通の価値観(Shared value)

(続く)