【インタビュー】女性企業医師ガン領域専門ナナさん

企業の中でのグローバル開発の厳しさを身をもって体験、今やりがいを感じる。

インタビュアー

企業に入るまでの経験、経緯についてお聞かせください

女性企業医師
ナナさん

大学を卒業してからずっと外科医として癌の臨床に携わってきました。途中、学位取得のために病棟から離れて基礎研究を2年ほどしましたが、それ以外は基本的に15年ほど臨床ばかりやってきました。基礎研究を学位のためにやって、病棟から離れたときは、手術の腕が鈍るような気がして、早く臨床に戻りたい一心で研究室に泊まり込みで実験をする毎日でした。その後病棟に戻ってからは、手術・臨床の腕を上げるべく、今度は病棟に長時間いるような生活となりました。

インタビュアー

厳しい生活ですね。

女性企業医師
ナナさん

40代が近くなったころに、自分のキャリアをぼんやりと考えはじめ、外科医として癌の臨床をやってきて、自分が今できていないこと、このままでは後で後悔するだろうという事を考えました。また、自分の限界、自分の性格 (一度にいろいろなことをできない不器用なタイプ)もなんとなくわかってきました。乳腺外科医でしたが、どんなに完璧な手術をしても再発するという、癌治療の限界を感じていました。

インタビュアー

大学で癌の治験には参加しましたか?

女性企業医師
ナナさん

大学病院でしたので、様々なクリニカルトライアルに参加する機会があり、治療薬に結びつく癌のメカニズムをもっと研究したいと思うようになりました。ただ当時周りには製薬会社に入るという選択肢はあまり人から聞いたこともなかったので、まずは、基礎研究だろうと、また私の性格から研究するなら集中してやりたいということから、かなり遅い年齢(41歳)でアメリカの大学でポスドクとして3年間癌の基礎研究に従事しました。

インタビュアー

3年間の研究留学生活の中で何か新しい視点は生まれましたか?

女性企業医師
ナナさん

アメリカ留学時代にいろいろな出会いに恵まれて、製薬会社で働くというoptionがあることを知りました。それまで考えた事がないoptionでしたし、また新しいことを一から始めることに少し躊躇しましたが、癌治療外科医としての長年の経験とアメリカポスドク生活での基礎研究の経験を活かせて、一臨床医として病棟に戻るよりも、より多くの患者さん、社会に貢献できる可能性、そしてGlobalで働くことの魅力から、製薬会社に入って臨床研究をするとう決断にいたりました。その際、industry経験がない、アメリカ医師免許がないという事で、アメリカでの就職が難しいという話を聞き、DDCPのfounderの中鉢さんからご紹介いただいたリクルーターさんを通して外資系の日本支社の面接を数回受けました。

インタビュアー

アメリカでは企業経験を持った医師がたくさんいますから、即戦力として彼らの採用がメインになっているのですね。

女性企業医師
ナナさん

最終的には、癌の歴史、パイプラインが豊富、面接官との相性などから一社を選びました。時々、1社目に選ぶべき会社はこれで良かったのかどうか不安になることもありますが、これまでのいくつかの転機の際にも、はじめの1年くらいはかなり辛抱することが多いのが常なので、頑張ってやってきて、今2年8か月になりますが、やっと最近、この仕事を選んでまたこの会社に入って良かったと思えるようになってきました。

インタビュアー

企業に入っても厳しいことはいろいろありますね。

女性企業医師
ナナさん

臨床や研究から突然会社に入ると、組織の違い、全く新しい事を勉強する必要性などから、最初のうちはかなり大変かと思います。仕事の満足感が得られずに、入社前に想像していたのと違うという感覚になることもあるかもしれませんが、私はその際に何度もDDCPのfounderの中鉢知子さんに相談にのっていただいて、ここまで来ることができました。知子さんには大変感謝しておりますし、これからの人にも、DDCPのサポートが役に立つかと思います。

インタビュアー

医師が企業に入るときのカルチャーショックをできるだけ少なくして、企業で早く活躍の場を獲得し、医薬品開発に貢献してほしいというのがDDCP設立の動機の一つです。今はアメリカと日本の行き来を頻繁にされていますね。

女性企業医師
ナナさん

日本の会社(外資系)の臨床開発部でindustryの経験をスタートしましたが、会社によってもかなり違うようですが、私の会社の場合は、現在はほとんどがGlobal studyでした。Global studyの場合には日本のphysicianの役目は、Global teamから送られてきたstudy designが日本の現状にあうのかどうかassessするという役目でした。日本のinvestigatorとglobal teamとの橋渡しのような役目で、自分のideaを反映することもできず面白みにかけました(だだし、この状況は会社や部署、タイミングにもよるようです)。入社後すぐに上司との面接で目標設定があったのですが、study designをデザインし、そのrationaleを考えることのできるpositionにつきたいという事を、漠然と3-5年で目標設定し、それには何が必要かなどを上司と相談していました。

インタビュアー

キャリアプランを描き、またそれをしっかり上司にアピールしていたわけですね。

女性企業医師
ナナさん

その後、Globalで新しい試験を立ち上げたいけれどresourceが足りないという話が日本にきたようで、まだ入社1年未満の私に、Global study physicianの話がきました。当時は他に、私よりも経験の長いphysicianが数名いましたが、私だけがずっとGlobalに興味があると言っていたのを買ってくれたようでした。最初、私はまだ日本の会社での経験も短く、英語にも自信がないので、他にもっと適切な人がいると思いますので今回は遠慮してまたの機会にお願いしますとお断りしました。でも、その後、同じ機会が3年後にまた来るとは限らない、今準備ができていないような気がして自信がないけれど、3年後に準備万全になっている可能性も不明、ということを考え直して、最終的に引き受けました。

インタビュアー

キャリアを延ばすきっかけでしたね。

女性企業医師
ナナさん

Global teamに入ってからはかなり大変でした。まずは英語に問題があるのと、phase 3 studyの経験がほとんどない状況でphase3 studyを立ち上げるというプロジェクトを率いることになりました。精神的にも身体的にもかなり大変な仕事で、辞めようかと思うこともありましたが、知子さんをはじめ、いろいろな人にサポートをしていただいて続けることができています。今では、この仕事に本当にやりがいを感じることができ、ここまでやってきて良かったと思うようになりました。まだまだ、日々、チャレンジが多く、ストレスも多いのですが、これまで私がやってきた臨床、研究がすべて活かせているという感覚、自分が成長しているのを実感できている、さらに世界の多くの患者さんに貢献できているという感覚があり、このキャリア選択は私にあっていたと思っています。

インタビュアー

ありがとうございました。