【インタビュー】金子健彦さん

インタビュアー

それではまず製薬企業に入られたきっかけを教えてください。

金子健彦さん

製薬会社に入ったきっかけは、大学医局にいた際にひょんなことからリクルーターに出会いまして、当時は医局では無給助手で当直や外来のアルバイトで生計を立てていたため、将来に不安を感じており、病院の勤務医以外で常勤で働いて収入を得ることに魅力を感じ、転職を決めました。

インタビュアー

そうですね。きっかけはそういうところにあるものですよね。入ってみてどうでしたか?

金子健彦さん

製薬業界に入って最初はMedical Affairsを担当しました。当時はまだ29歳で、そんな若造がオンコロジー領域の日本のトップの先生方とお会いでき、また自らも海外の学会で最新の抗がん剤治療について情報を仕入れ、そうした先生方と意見を交換することができて、非常に刺激的で楽しい毎日でした。

インタビュアー

最新の治療について学ぶことができますね。その後は開発にも従事されましたか?

金子健彦さん

開発をしたいと思ったきっかけですが、Medical Affairsとして、海外学会で新薬の開発状況を仕入れていくうちに、開発戦略には医学的見地が重要だと認識したためです。抗がん剤であれば、最初の開発はFirst lineなのかsecond lineなのかそれともすべての治療に奏功しない患者なのか、また併用薬はどうするのか、術後あるいは術前補助化学療法はどうするのか、遺伝子変異の有無は問うのか等々、治験をどの対象患者で行うかの選択肢はいろいろあります。そうした選択によって、有望であった新薬候補があっさり開発中止になったり、あるいはダークホース的に、第3相試験の結果で急に有望な新薬と騒がれるようになったりというのをMedical Affairsの視点で見てきますと、開発戦略の重要性と、医学の知識はこういう場で活かせるのではないかと考えました。

インタビュアー

全く同感です。医薬品開発戦略に医学知識が必要ですね。

金子健彦さん

はい。すでに製薬企業の開発でご活躍されている諸先輩方に導かれて、臨床開発に従事できるようになりました。私が業界に入った当時は、モノクローナル抗体を用いた抗がん剤が一世を風靡していまして、モダリティの劇的な変化を目の当たりにしました。モノクローナル抗体の開発経験がある人が、続けて新しい有望な抗体医薬のプロジェクトを担当していて、開発はモダリティの変化についていく必要があることを強く認識しました。

インタビュアー

本当にエキサイティングですよね。一つの成功が次の成功につながっていきます。医薬品についても、自身のキャリアについても。

金子健彦さん

これからどんなモダリティが創薬の主流になるのか、それを自分の目で確かめたくて早期開発にも参画し、経験を積まさせていただきました。私は2015年まではメガファーマと呼ばれるようなグローバル企業に在籍していましたが、どの会社のパイプライン(開発候補品のポートフォリオ)も充実していて、またアカデミアで有望そうな研究があればすぐに提携してパイプラインを強化していて、まったく隙がありませんでした。

インタビュアー

確かに、その辺は今後製薬企業を目指す方にも知っておいてほしいですね。決して臨床をしているのと比べて時間的余裕がいっぱいあるという事はありませんね。金子さんはメガファーマの経験の後新しいキャリアチャレンジをされていますね。

金子健彦さん

はい。遺伝子治療と再生医療は、まだ本格的に手掛けている会社は少なく、メガファーマでも経験値が蓄積していないため、ここなら自分のように製薬企業の経験が比較的少なくても勝負できるかもしれないと思いました。それがきっかけで再生医療を開発するベンチャーに参画しました。現在は新たな会社にてiPS細胞由来の製品の実用化のため精進しています。

インタビュアー

わくわくします。それでは若い医師の方々に一言お願いします。

金子健彦さん

若い先生方への一言ですが、私が製薬企業に入ったころは、製薬企業に医師が入るのは物珍しかったので、企業内医師の立ち位置や、どうチームに溶け込んで結果を出していくかといったことに苦労がありましたが、今は、製薬企業内の医師の数が増え、各企業の中でも、医師というだけでは差別化しにくくなっています。私は新たなモダリティの経験を積むことに活路を見出そうとしてますが、みなさんも、もしご縁があって、この業界で働く機会がありましたら、各社の戦略や業界全体の動向について見聞を広めていただき、何で差別化して勝負をするのかを見極めて欲しいと思っています。

インタビュアー

企業に入ってからも様々な選択肢があることを知って、目標をしっかり持ってほしいですね。今日はありがとうございました。