薬事とは

医薬品開発を適切に、効率よく行うためには、規制当局との相談が不可欠です。日本では医薬品医療機器総合機構が各種の相談制度を用意しており、適宜、その機会を利用して開発を進めます。相談に際しては、品目の特性・相談に至った経緯などを説明したうえで、質問事項及びそれに対する会社側の考えをまとめて提出する必要があります。また、手数料や資料のまとめ方、申込書の作成など、通知に基づいて準備を進める必要があります。薬事は規制当局とのインターフェイスとして、一連の準備及び相談を円滑に進めるために、開発チームをリードします。

また、臨床試験で有効性・安全性が検証されると、非臨床試験、品質・安定性の試験データと合わせて、厚生労働省に承認の申請を行います。そして、医薬品医療機器総合機構および学識経験者などで構成する薬事・食品衛生審議会の審査を受けることになります。当局の審査をパスし承認を受けなければ、医薬品として販売することはできませんので、承認は医薬品開発のゴールとも考えられます。承認申請に際しても、薬事は、規制当局とのインターフェイスとして、一連の準備及び審査中の照会事項対応等に際し、開発チームをリードします。

GCP

法律およびGCPで定められている治験を実施するためのルール には次のようなものがあります。

● 治験の内容を国に届け出ること
製薬会社は、治験を担当する医師が合意した「治験実施計画書」(「くすりの候補」の服薬量、回数、検査内容・時期などが記載された文書)を厚生労働省に届け出ます。厚生労働省は、この内容を調査し、問題があれば変更等の指示を出します。

● 治験審査委員会で治験の内容をあらかじめ審査すること
治験審査委員会では「治験実施計画書」が、治験に参加される患者さんの人権と福祉を守って「くすりの候補」のもつ効果を科学的に調べられる計画になっているか、治験を行う医師は適切か、参加される患者さんに治験の内容を正しく説明するようになっているかなどを審査します。
治験審査委員会には、医療を専門としない者と病院と利害関係がない者が必ず参加します。
製薬会社から治験を依頼された病院は、この委員会の審査を受けて、その指示に従わなければなりません。

● 同意が得られた患者さんのみを治験に参加させること
治験の目的、方法、期待される効果、予測される副作用などの不利益、治験に参加されない場合の治療法などを文書で説明し、文書による患者さんの同意を得なければなりません。

● 重大な副作用は国に報告すること
治験中に発生したこれまでに知られていない重大な副作用は治験を依頼した製薬会社から国に報告され、参加されている患者さんの安全を確保するため必要に応じて治験計画の見なおしなどが行われます。

● 製薬会社は、治験が適正に行われていることを確認すること
治験を依頼した製薬会社の担当者(モニター)は、治験の進行を調査して、「治験実施計画書」やGCPの規則を守って適正に行われていることを確認します。
なお、GCPに関する情報は厚生労働省のホームページでも公表されています。また,国際的に合意された臨床試験の実施に関する基準についても以下のアドレスで解説されています。上記の記述は下記の情報を引用、改変しています。

厚生労働省のGCPの解説に関するホームページ:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu2.html

国際的に合意された臨床試験の実施に関する基準についての情報:
https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0028.html

規制等

日本の薬務行政は 1) 医薬品医療機器等法、2) 機構法、3) 安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律、4) 毒物及び劇物取締法、5) 麻薬及び向精神薬取締法、6) 大麻取締法、7) あへん法、8) 覚せい剤取締法等の関係法規に 基づいて運営されています。
これらの法律の施行及び運営にあたっての細則は「医薬品医療機器等法施行令」、「医薬品医療機器等法施行令」等の政・省令や告示、並びに厚生労働省の所轄の局長や課長が発する「行政通知」に示されています。
この中でも、医薬品の承認申請に関する事項は「医薬品医療機器等法」の第14条に規定されています。また、承認申請に際して添付しなければならない資料については「医薬品医療機器等法施行令」の第40条に規定されています。つまり医薬品開発とは、厚生労働大臣の承認を受けるのに必要なデータを収集するために試験を実施することとも言うことができます。

(医薬品、医薬部外品及び化粧品の製造販売の承認)

第14条 医薬品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬品を除く。)、医薬部外品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬部外品を除く。)又は厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。

2 次の各号のいずれかに該当するときは、前項の承認は、与えない。
(1) 申請者が、第12条第1項の許可(申請をした品目の種類に応じた許可に限る。)を受けていないとき。
(2) 申請に係る医薬品、医薬部外品又は化粧品を製造する製造所が、第13条第1項の許可(申請をした品目について製造ができる区分に係るものに限る。)又は前条第1項の認定(申請をした品目について製造ができる区分に係るものに限る。)を受けていないとき。
(3) 申請に係る医薬品、医薬部外品又は化粧品の名称、成分、分量、用法、用量、効能、効果、副作用その他の品質、有効性及び安全性に関する事項の審査の結果、その物が次のイからハまでのいずれかに該当するとき。
イ 申請に係る医薬品、又は医薬部外品が、その申請に係る効能、効果又は性能を有すると認められないとき。
ロ 申請に係る医薬品、又は医薬部外品が、その効能又は効果に比して著しく有害な作用を有することにより、医薬品、又は医薬部外品として使用価値がないと認められるとき。
ハ イ又はロに掲げる場合のほか、医薬品、医薬部外品又は化粧品として不適当なものとして厚生労働省令で定める場合に該当するとき。
(4) 申請に係る医薬品、医薬部外品又は化粧品が政令で定めるものであるときは、その物の製造所における製造管理又は品質管理の方法が、厚生労働省令で定める基準に適合していると認められないとき。

3 第1項の承認を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、申請書に臨床試験の試験成績に関する資料その他の資料を添付して申請しなければならない。この場合において、当該申請に係る医薬品が厚生労働省令で定める医薬品であるときは、当該資料は、厚生労働省令で定める基準に従つて収集され、かつ、作成されたものでなければならない。
(以下省略)

(承認申請書に添付すべき資料等)
第40条 法第14条第3項(同条第9項において準用する場合を含む。)の規定により第38条第1項又は第46条第1項の申請書に添付しなければならない資料は、次の各号に掲げる承認の区分及び申請に係る医薬品、医薬部外品又は化粧品の有効成分の種類、投与経路、剤型等に応じ、当該各号に掲げる資料とする。
(1) 医薬品についての承認 次に掲げる資料
イ 起原又は発見の経緯及び外国における使用状況等に関する資料
ロ 製造方法並びに規格及び試験方法等に関する資料
ハ 安定性に関する資料
ニ 薬理作用に関する資料
ホ 吸収、分布、代謝及び排泄に関する資料
ヘ 急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、遺伝毒性、催奇形性その他の毒性に関する資料
ト 臨床試験等の試験成績に関する資料
チ 法第52条第1項に規定する添付文書等記載事項に関する資料
(以下省略)