1.日本における国際共同治験データの取り扱いの変遷

1985年

1985年 
海外で実施された臨床試験データの受け入れ開始

海外で実施された臨床試験データについては、昭和60年6月29日薬 発第660号厚生省薬務局長通知「外国で実施された医薬品等の臨床試験データの取扱いについて」に基づき、承認審査資料として受け入れられるようになりました。それでもなお、日本人と外国人の人種的な差並びに日本と外国の環境因子及び医療実態の差等(以下 「民族的要因」という。)が医薬品の有効性及び安全性に与える影響を考慮して、薬物動態試験(Phase 1)、投与量設定に関する試験(Phase 2b)及び比較臨床試験(Phase 3)については国内臨床試験データ の提出が求められていました。

1985年
1998年

1998年
「ICH E5ガイドライン」*1の発出

1990年にICH (International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議))の活動が始まり、医薬品の作用に与える民族的要因の影響を科学的に評価し、外国臨床試験 データの利用を促進するための方策が検討され、1998年にICH E5ガイドラインが発出されました。このガイドラインに従って、薬物動態試験(Phase 1)及び用量反応試験(Phase 2b)を日本人で実施し、外国で実施されたこれらの臨床試験データと比較することにより民族的要因を検討して、比較臨床試験(Phase 3)を含む海外データを外挿することで臨床データパッケージを構築することができるようになりました。

*1: 外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因についての指針

1998年
2007年

2007年
「国際共同治験に関する基本的考え方について」*2発出

上記の方法では日本での開発・上市が海外に遅れるドラッグラグが生じてしまうことから、2007年に「国際共同治験に関する基本的考え方」が発出され、国際共同治験に参加することにより海外とほぼ同時に日本での開発を開始し、ドラッグラグを無くすことが推奨されるようになりました。

*2: 国際共同治験に関する基本的考え方について

2007年

2.日本での申請を目的としたアジア開発

アジア開発については、2012年に発出された「国際共同治験に関する基本的考え方(参考事例)」の中で東アジア地域での国際共同治験に関する留意事項が示されましたが、「東アジア地域で実施する治験であっても、欧米諸国と実施する国際共同治験の場合と同様に、民族的要因の差異が医薬品の有効性及び安全性に及ぼす影響について予め十分 に検討した上で、国際共同治験を計画し実施する必要がある」とされ、「今後、東アジア地域における科学的データや情報をより集積し検討することで、民族的要因の差異に関する理解が深まり、東アジア地域における国際共同治験をより円滑かつ適切に実施することにつながると考えられる。」との期待感が示されただけにとどまりました。

E17ガイドラインでは、「地域」及び「地域の併合戦略」の考え方が示されましたが、「併合戦略は、治療効果や対象疾患に影響を及ぼすことが知られている内因性・外因性民族的要因の分布、これらの民族的要因の地域間の類似性に基づいて、正当化されるべきである。」 とされており、事前情報により正当化したうえで、治験実施計画書及び統計解析計画書に明記することが求められています。

3.日本における国際共同治験の増加

日本における国際共同治験(MRCT: Multi-Regional Clinical Trials) 届出(CTN: Clinical Trial Notification)のトレンド

全体の治験届出数はほぼ一定数で推移していますが、その中での国際共同治験の割合は年々増加の傾向を示しています。

日本における国際共同治験(MRCT: Multi-Regional Clinical Trials)に基づく承認申請(NDA: New Drug Application) のトレンド

全体の承認申請数はほぼ一定数で推移していますが、その中で国際共同治験に基づく申請の割合は際立って増加しています。それに対してアジア開発に基づく申請割合はそれほど大きく増えてはいません。